最新型の鍵でも独自の不具合を起こすことがある

田舎暮らしだった私に、都会に出ようと決意させたのは元カレだった。彼は小学校からの同級生で幼馴染でもあったのだが、中学に入ってから付き合うことになった。順風満帆でこのままいつかは結婚へ…と思っていたのだが、元カレが東京の大学に行ってからというもの、彼は変わってしまった。どうやら東京に女ができたようだった。その噂は狭い田舎でもちきりとなり、私は「東京に出て行った男に捨てられた田舎の女」という目で見られるようになってしまったのである。傷心でいたたまれなくなった私は田舎を出て東京で働く決意をしたのだった。

当然私の両親は大反対だった。だけど私はもう田舎暮らしにうんざりしていたこともあったし、正直に言えば元カレに未練があったということも認めなければならない。結局防犯の優れた女性専用マンションに住むという条件で上京を許してもらったのである。

防犯性に優れたマンションということで鍵はもちろんオートロック式、しかも最新型のカード式のものだ。このカードの磁気を読み取って鍵が開けられるようになっているのだが…住み始めて数か月もたたないうちにカードの磁気を読み取ってくれず、ドアを開けることができないというトラブルに見舞われた。運の悪いことに夜中の出来事だったので管理人さんに連絡もできず困ってしまった。まだ知り合いが殆どいないので誰にも頼ることができない。最新型の鍵なら安心だとばかり思っていたけれど、それでも独自の不具合を起こすことがあるんだなあと、途方にくれて夜空を見上げた。こんな時に思い浮かぶのは元カレの顔ばかりである。思い切って連絡してみようか、でももし迷惑がられたらどうしよう。スマホを握りしめながら、逡巡するのだった。